きせつのうつろい(さいじき)

冬来りなば春遠からじ 2016.11.6 小林勝

「冬来りなば春遠からじ」が引用された文章を見つけましたので、

2013年3月に作成した文章とともにご紹介します。

 

<引用> 讀賣新聞(読売新聞) 編集手帳 2016.11.6

実りの秋といい、スポーツの秋という。いずれも健康で前向きなイメージである。この季節の印象が、人生の秋という言葉で一変する。脳裏に浮かぶ情景が稲穂から枯れ葉にかわる◆秋の次には冬が来る。「冬来りなば春遠からじ」という英詩の一節があるが、人生の秋や冬に次の春はない◆過ぎた季節を惜しんでも始まらない。<人生の冬のなかに生きつつ、そこに春夏秋冬を見ること>、この心掛けで老いが豊かになると、臨床心理学者の河合隼雄さんが先の詩を引きながら著書でつづっている(『中年クライシス』)◆東京の渋谷で1971年11月、沖縄返還協定阻止を叫ぶ過激派学生が警察官を殺害した。45年の節目を迎えるこの事件に最大300万円の公費懸賞金がかかった。指名手配されたまま逃亡を続ける活動家は67歳になる。潜伏する身に季節が巡る実感は薄いだろう◆河合さんは書いている。<せっかくこの世に生まれてきて春だけ楽しむのも、もったいない話である。春夏秋冬をすべて味わう方が面白い>。警察官は21歳だった。失われた季節の重みは比べようもない。

 

季節・音楽・ダンス   2013.3.9(2013.3.11 改定)小林勝

渡辺貞夫さんが音楽について記述していた自叙伝が数年前(2年くらい前かな?)に

読売新聞に載りました。アフリカに旅行に行った時に、

「木々の音色や小鳥のさえずりがジャズに聞こえてきた」という記述がありました。

ビックリしましたね。渡辺さんの感性を垣間 かいま 見ることができます。

風に揺れる木々の音や小鳥のさえずりがジャズになったんです。

サンバだって同様でしょう。

 

アフリカにはすべてがある  渡辺貞夫写真展

http://news.biglobe.ne.jp/economy/1212/prt_121212_2455055247.html 

 

新聞屋のお仕事vol.278 

 

ルンバは、足を床から離さないで踊ります。

私が習った頃は、アフリカから連れて来られた黒人が、逃げられないように

足を鎖(くさり)でつながれたような踊りと言われていました。

今では、もともと奴隷制度(植民地支配)に問題があったこともあり、

少し前(10年くらい前?)に 毎年6月にNHKテレビで放映される

インターナショナルダンス選手権では 解説の方(プロの先生)が

「愛の踊り」とお話になっていました。すごくいい表現を考えついたと思います。

ルンバが、未来永劫 みらいえいごう に 魂 たましい を注入された瞬間です。

 

渡辺さんのジャズ談義も、渡辺さんがお話しになったから感銘を与えてくれます。

もし、私が言っても 残念ながら誰も振り向いてはくれないでしょいうね?

「松島や ああ松島や・・・」みたいなものです。

 

「松島や ああ松島や 松島や」の句が広く知られ、これが芭蕉作と

言われることがあるが、実際は、江戸時代後期に 相模国(神奈川県)の

狂歌師・田原坊が作ったもの。

仙台藩の儒者・桜田欽齊著「松島図誌」に載った 田原坊の

松嶋やさてまつしまや松嶋や」の「さて」が「ああ」に変化し、

今に伝えられている。

  

松島へのあこがれ

http://www.bashouan.com/puBashous.htm

 

でも、学問・文学とは不思議なもので、次の文章を聞いたらやはり皆さん、

ひざまずくと思います。この表現力の素晴らしさにです。

 

東風 こち 吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて春ぞ忘るな

http://blog.goo.ne.jp/hide110-kujira/e/38793ef7b6e6d1501ea98c780a3a5b57

  

学問の神様、菅原 道真(すがわら みちざね)の句です。

やはり、その道に長けた たけた  お方の文章は、感銘を与えてくれます。

 

(季節柄、水戸や 湯河原の梅が満開になったというニュースも聞こえる昨今。

 三寒四温から 春に向かう今日この頃ですので、引用してみました。)

 

ついでに、今度は外国の詩を一句。

 

冬来りなば 春遠からじ

If winter comes, can spring be far behind

イギリスの詩人シェリーの「西風に寄せる歌」の一節

「If winter comes, can spring be far behind?」に基づく。

 

日本人にも、同じような詩を詠んだ方がいらっしゃいます。

プロレタリア作家の 宮本百合子のステキな感性に触れてください。

 

うららかな春は 厳しい冬の後にやってくる

可愛い蕗の薹(ふきのとう)は 霜の下で用意された

宮本百合子